三陸沖の好漁場をつくる夏の表層水(その4)
【基礎知識-001-16】
三陸沖(亜寒帯域)の海が好漁場をつくりだす最も重要なことは、夏と冬の期間がはっきりと分かれていることにあります。春と秋の期間が短いと言っても良いかもしれません。南極や北極では白夜と言って1日中太陽が沈まない期間ができます。三陸沖のような亜寒帯域では夏、白夜にはならなくとも太陽が出ている時間(日の出から日の入りまでの時間)は15時間以上にもなります。一方冬の間は9時間位しか太陽が出ていません。しかも太陽が高くに上らないので、海が受け取る太陽光の量はもっと少なくなります。太陽が出ている時間が1年を通じてどのように変化するのかを、北の根室(43°20′N)と南の鹿児島(31°36′N)を例に、図001-19に示しました。夏、太陽の出ている時間は鹿児島より根室の方が長いことに注目して下さい。
図001-19 日の出から日の入りまでの時間
三陸沖の海は夏と冬とでは太陽の光の量に大きな差があって、夏にだけ盛んなプランクトン類の生物生産がおこなわれます。別の見方をするなら、この海域は生物の生育に適した時間が半年しか無いので、小さな生物(餌生物)しか育たないのです。三陸沖で取れる大きな魚は、この海の豊富な餌を狙って南の海からやって来て、大きく生育したものなのです。