三陸沖の好漁場をつくる夏の表層水(その3)

 【基礎知識-001-15】
秋になると、三陸沖の海は日光が弱くなり、風や波が強くなってきます。その結果、海面からは熱が奪われ、表層の水温は急に下がってゆきます。水温が下がると表層水は重くなり、上下の混合が盛んになります。その上、波による上下混合も盛んになるので、表層混合層と呼ばれる水温や水質の一様な厚い層(100m程度)が形成されます。
表層混合層は良く耕された畑のようなものです。なぜならば、夏の表層水はプランクトンによってすっかり栄養分を使いつくされた水になっていたのですが、上下水の混合によって深いところにあった栄養分が表層にたっぷり持ち上げられた状態となっているのですから。
春になり、日光が強くなると表層混合層の海面近くでは豊かな日光と栄養分とを利用して一気に植物プランクトンが繁殖します。それを餌とする小さなエビなどの動物プランクトンも大増殖します。水が十分に暖かくなり、餌がたっぷりとある三陸沖の海にはこの餌を求めてイワシ、サバ、イカ、カツオ、マグロと言った魚が次々と集まってくるのです。三陸沖が豊かな漁場となるのは暖かくて、餌の豊富な夏の表層水があるからなのです。しばしば言われるように「親潮(寒流)と黒潮(暖流)がぶつかって好漁場を形成する」と言う訳では無いのです。

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