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三陸沖の好漁場をつくる夏の表層水(その2)

  【基礎知識-001-14】 千葉県の房総半島よりも北の海域は冬と夏の海面水温の差が非常に大きくなります(10℃から20℃程度)。冬と夏の水温差がこれほど大きくなる海域は世界的に見てもめずらしいのです。夏の水温が高くなる主な理由は春先から日光が強くなるからです(南の海から暖かい水が運び込まれる部分も当然ありますが)。 日光のうち水温を高める赤外線は表層の2mの層の中で完全に吸収されてしまいます。つまり、表層2mの薄い層だけが加熱され、表層水温がどんどん高くなって行くのです。水温が高くなればなるほど水は軽くなるので、下層の冷たくて重い水とは混じりにくくなります。 上下の水があまり混じらないため、海面付近の水温はますます高くなるのです。波によって上下の水が混合させられますが、夏の三陸沖の波は冬に比べかなり穏やかで、波による上下の混合はあまり進みません。その結果、太陽光で加熱された表層水は10m~30m位の厚さしか無いのです。しかし、この薄い層内ではプランクトンなどの餌生物の繁殖が活発に行われ、好漁場をつくりだす基となっているのです。

三陸沖の好漁場をつくる夏の表層水(その1)

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  【基礎知識-001-13】 夏の表層水は下層の海の構造を隠すベールの役割をしていると、この前のブログで書きました。海の研究者、特に海洋物理系の研究者にとって、夏の表層水は取り払ってしまいたい邪魔ものであることが多いのです。しかし、夏に現れるこの薄くて暖かい層は海の生物生産にとって大変重要な役割を果たしています。冬と夏の海面水温分布の違いを見ておきましょう。図001-17には冬(1月末)の、そして図001-18には夏(8月末)の海面水温分布を示しておきました。 図001-17 1月末の海面水温(2015.01.30) 図001-18 8月末の海面水温(2015.08.27) この海域の海面水温は冬と夏では大きな違いが見られます。夏の海面水温は冬に比べ10℃から20℃も高くなっているのです。冬5℃以下だった海域が20℃以上にもなるのです。この海域は世界の海でも最も夏冬の水温差が大きくなる海域の一つです。 この図に示された海域は世界の三大漁場と呼ばれる好漁場をつくりだしています。いったい何がこの海域を好漁場にさせるのでしょうか?

夏の海の表層は海のベール

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  【基礎知識-001-12】 夏の海面は太陽によって強い加熱を受けています。そのため、広い範囲が同じように温められ、どこもが同じような海面水温を示すことになります。 千葉県銚子沖での夏の海面水温を図001-15に示しました。  図001-15 海面水温分布(2015/08/12) この図によれば沿岸部には低温水があって、沖合に行くほど水温が高くなる緩やかな温度変化が見られます。 太陽の加熱を強く受けた層の厚さは20m程度ですので、それよりもう少し下層(50m深)の水温を見ますと図001-16のようになっています。 図001-16 50m深水温分布(2015/08/12) 海面水温からではとても推測できない様な際立った海の構造(流れや水温分布の状態)が見えてきます。魚の動きはこうした海洋構造と密接な関係を持っているはずです。太陽によって暖められた海面付近の薄い表層水は海の構造を覆い隠してしまうベールの働きをしているの です。

黒潮大蛇行(その1)

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  【T-003】 2015年7月末から黒潮の流路が不安定化しだし、8月に入るとすぐに大蛇行状態の流路を取り出しました(図005T)。 図005T  200m深水温分布(2015.08.06) 8月末時点での黒潮流路は図006Tのようになっています。始めはとても急な曲がりくねりをしていた黒潮が8月末にはかなり緩やかな曲がり方になっています。黒潮の最南端部も30㎞ほど北に移動しています。黒潮に囲まれた冷水域(黒潮大冷水塊)の水温もやや高くなってきています。 図006T  200m深水温分布(2015.08.26) 8月始め、伊豆諸島はかろうじて黒潮の高温側にあったのですが、今では伊豆諸島がすっかり冷水域に取り込まれています。島回りの水温は3℃から5℃も低くなっています。水温変化に敏感な魚たちはいったいどうしているのでしょう。 「黒潮が大蛇行を始めました!」

海の中の低気圧と高気圧

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  【基礎知識-001-11】 これまで海の中にはたくさんの渦が存在していることを見て来ました。中心部が低温な渦は周囲の流れが反時計回りとなっており、中心部が高温な渦の場合は時計回りの流れができていました。こうした現象は大気の低気圧や高気圧と同じ現象で、低温な渦は低気圧に、高温な渦は高気圧に相当します。渦の大きさは直径で100㎞~300㎞位のものが多く、こうした渦を専門家は中規模渦(ちゅうきぼうず)と呼んでいます。 図001-14  暖水渦と冷水渦の断面と回転方向 渦の断面を見ると図001-14のようになっています。暖水渦の場合は海面付近の暖かい水が深くまでもぐり込んだ状態になっていて、冷水渦の場合は下層の冷たい水が海面に向かって立ちあがった状態になっています。この図から暖水渦や冷水渦の大きさが深さによって変わるのも分かります。

3つの目玉のその後

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  今日もハワイ周辺に気圧の目玉が3つ、仲良く並んでいます。 そのうち、一番西側にある目玉①が台風17号となりました(気象庁発表)。気になるこの目玉3つ、そろってこのまま日本に近づいてくるのかどうか・・・ 来週の火曜日と金曜日の「海天・船」見てみました。 9月8日(火)9時の予想気圧分布図 (気象庁、9月1日21時予報) 9月11日(金)9時の予想気圧分布図 (気象庁、9月1日21時予報) 2枚の気圧分布図を見比べると、真ん中の目②は北へ、東側の目③は少し西に移動しそうです。 台風17号については気象庁の台風情報に注意してください。 *「海天」では気象庁の予報データをもとに作成した図を使用しています。

ハワイ周辺に3つの目玉?

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  「海天」トップページの画像で、ハワイ周辺に気圧の目玉が3つ見えてきました。 Joint Typhoon Warning Center (JTWC) URL: http://www.usno.navy.mil/JTWC/ 9月1日9時の予想気圧配置図 (気象庁、9月1日9時予報) 9月8日9時の予想気圧配置図 その正体は・・・ 米海軍の進路予想はこちら→ ちなみに、「海天・船」ではこのように見えます。 (気象庁、8月31日21時予報) この3つ目はどうやら西へ進んでいるようです。