三陸沖の好漁場をつくる夏の表層水(その1)
【基礎知識-001-13】
夏の表層水は下層の海の構造を隠すベールの役割をしていると、この前のブログで書きました。海の研究者、特に海洋物理系の研究者にとって、夏の表層水は取り払ってしまいたい邪魔ものであることが多いのです。しかし、夏に現れるこの薄くて暖かい層は海の生物生産にとって大変重要な役割を果たしています。冬と夏の海面水温分布の違いを見ておきましょう。図001-17には冬(1月末)の、そして図001-18には夏(8月末)の海面水温分布を示しておきました。
図001-17 1月末の海面水温(2015.01.30)
図001-18 8月末の海面水温(2015.08.27)
この海域の海面水温は冬と夏では大きな違いが見られます。夏の海面水温は冬に比べ10℃から20℃も高くなっているのです。冬5℃以下だった海域が20℃以上にもなるのです。この海域は世界の海でも最も夏冬の水温差が大きくなる海域の一つです。
この図に示された海域は世界の三大漁場と呼ばれる好漁場をつくりだしています。いったい何がこの海域を好漁場にさせるのでしょうか?